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OCTとは

OCTとは、Optical Coherence Tomography(光干渉断層撮影)の略語で、光の干渉性を利用して試料内部の構造を高分解能・高速で撮影する技術です。近赤外線を照射して非接触・非侵襲で撮像できますので、被爆の心配もなく、人体の様々な器官の断層撮像に用いられています。OCT画像の例として、指の皮膚のOCT画像の例を図1に示しますが、このような立体的な断層画像が高画質で撮像でき、ソフトの画像操作で任意の断層面(2次元)の画像を切り出して示すことができます。

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システムズエンジニアリングのOCT
 
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さまざまなイメージング技術の比較を、横軸をイメージング深さ、縦軸を解像度にとり、図2に示します。OCTは、病院での検査に用いられているCTスキャンや超音波エコグラフィーと同様の原理の技術です。光源として可視光や近赤外光を用いるため、X線や超音波程の侵入長は得られませんが、顕微鏡に匹敵する分解能で深さ数mmの非破壊分析が可能です。

連動の様子

OCTの測定を行うには、光源からの光をハーフミラーで分割し、一方を試料、他方を参照ミラーに入射させます。試料へ入射した光は、試料の表面や内部の構造など、屈折率に差がある界面で反射されて、ふたたび試料表面から出射されます。試料から反射して戻ってきた光と、参照ミラーで反射されて戻ってきた光はハーフミラー上で再び重ね合わされます。このとき、双方の反射光が通ってきた距離が等しければ2つの光は強めあい、逆に距離にずれがあると2つの光は打ち消しあいます (光の干渉)。参照ミラーを動かし、検出器上で双方の反射光が干渉し強めあう位置を観測することで、試料内のどの深さに反射面があるかを知ることができます。

連動の様子

OCTの性能と方法

より速く(速度)、より深く(深達度)、より詳しく(分解能)という

OCTの性能目標は、OCTの方法と関係します。OCTの方法を較べると、同じ計測時間なら、感度は、時間領域OCT(TD-OCT)よりもフーリエ領域OCT(FD-OCT)の方がよく、2つのFD-OCTの方法を比較すると、周波数走査OCT(SS-OCT)の方が、スペクトル領域OCT(SD-OCT)よりも計測可能深さを深くできます。従って、SS-OCTが広く用いられるようになってきました。

連動の様子

さまざまなOCT手法を図4に示します。図3で示した原理通りに、時間をかけて参照ミラーを動かしスキャンを行うのがTD-OCTです。ミラーを掃引する代わりにフーリエ変換により深さ情報を得る手法をFD-OCTと呼びます。FD-OCTをさらに細かく分類すると、SD-OCTとSS-OCTに分けられます。SD-OCTは、信号を回折格子とアレイディテクタで分光し、得られたスペクトルをフーリエ変換することで深さ情報を得ます。SS-OCTは、白色光の代わりに波長掃引レーザを用い、得られたスペクトルをフーリエ変換することで深さ情報を得ます。

SS-OCTとは

SS-OCTでは、光源であるレーザーの周波数を図5(B)に示すように繰り返し走査します。このとき、反射面が一つの場合は、干渉信号は図5(A)に示すように正弦波で変化します。反射面が奥になるに従って、干渉信号の周波数が高くなり、反射強度が強くなるほど、正弦波の振幅が大きくなります。実際の生体などの試料では、反射面は連続的ですので、振幅と周波数が異なる沢山の正弦波の重なり合いになっています。干渉信号をフーリエ変換すれば、重なり合いを分解することができ、奥行の距離(周波数に比例)の関数として反射率が求められます。これがSS-OCTの原理です。

連動の様子

A走査とB走査と断層画像

一つの周波数走査で得られる反射率の奥行距離依存性は、A走査と呼ばれます(Aはamplitudeの意)。レーザーの照射箇所を横に次々と移動して取得したA走査信号を集めて、横方向の距離と奥行方向の深さに対して、反射率の強弱を色の違いや濃淡に対応させて描いたものが2次元の断層画像で、B走査と呼ばれます(Bはbrightnessの意)。

SS-OCTの速さ

図5(B)に示す一つのA走査時間の逆数をA走査率と呼び、周波数の単位Hzで表してOCTの速さの目安とします。最近の高速SS-OCTでは、A走査率は50kHz~100kHzです。

SS-OCTの分解能

奥行方向の分解能δzは図5(B)に示す走査する周波数の幅Δf=fe-fsに反比例して上がります。通常、 SS-OCT光源の仕様で示されている波長走査幅Δλを用いて表すと、強度が一定なら、δz=0.44λ2/Δλになります。使用する波長λ=1310nm、波長走査幅Δλ=100nmとすると、分解能は7.6μmになります。通常はフーリエ変換で窓関数を使いますので、これより悪くなります。

SS-OCTの計測可能深さ

図5(A)に示す干渉信号は、一定の周波数間隔δfでサンプリングします。計測可能深さは、光速をcとして、δz=c/(4 δf)で与えられます。SS-OCTではδz=5~13mm程度です。

SS-OCTの適切な波長は

一般のOCT測定に適切な波長は1310nmです。眼の網膜を測定する場合は、水が主成分の硝子体を通して測定しますので、水による吸収が弱い波長1060nmが適切です。

SS-OCTの応用例は

眼科や循環器内科(心臓血管)では、OCTは不可欠な診断機器となっています。他にも、食道、気管支、大腸などの内臓の癌の診断機器や皮膚科や歯科向け診断機器の製品化が進められています。真珠の品質管理など、生体以外を対象としたOCT製品の開発も活発です。

関連製品情報

MEMS光源を用いた SS-OCTシステムは、高出力、高速掃引、広チューニングレンジが特徴です。また、光源単体での販売・OEM供給も承っております。

関連製品情報

コモンパス型長尺ファイバーOCT
工業製品の断層画像を、非接触・非侵襲で撮像

被検体の傷、クラック、白化、溶接状態、シワ等の2次元断層画像をリアルタイムに撮像・表示し、工業製品や設備の劣化の確認を現場で行います。コモンパス型OCT方式を採用することで、長尺の光ファイバー(約20m)を介してOCT本体から離れた測定物の撮像も可能です。OCT本体とデータ処理装置が内蔵された防水対応の筐体台車付きで、光ファイバー・ケーブルも防水性保護チューブで被覆されるなど、屋外使用を想定した設計です。
コモンパス型OCT [796 KB]

FF-OCTとは

FF-OCT (Full Field-OCT) はTD-OCTを原理として用いながら、より高速、高分解能を実現する手法です。従来のTD-OCTでは、一度に3次元空間内の1点の情報しか得られないため、深さ方向およびXY平面内のスキャンが必要であり、これによって測定時間が長くなっていました。FF-OCTはCCD、CMOSなどの2次元検出器でXY水平面内を一度に取得することで、TD-OCTを高速化する手法です。

連動の様子

FF-OCTの深さ分解能

FF-OCTの光源は、白色光 (広帯域光) を用います。FF-OCTの深さ方向の分解能は、この白色光の中心波長の2乗に比例し、帯域幅に反比例します (~ λ02/Δλ)。つまり、波長の短い光を使うほど、光源の帯域が広いほど、分解能が高くなります。ただし、波長が短い光ほど散乱されやすい性質がありますので、生体の内部を観察したい場合などは、赤色光や近赤外光を用いることが多いです。

FF-OCTの面内分解能

FF-OCTの面内の分解能は、2次元イメージングを行う光学系の分解能に依存します。たとえば高NAの光学顕微鏡のシステムに組み込むことで、1μm程度の分解能が得られます。

関連製品情報

FF-OCTシステムは、縦方向1μm、横方向1.5μmの超高分解能での全自動3D撮像が可能です。

関連製品情報

NEW
LC-OCTシステム
は独自の高解像度3Dイメージング撮像で、皮膚の微細内部構造(真皮の深さ)を非破壊でスピーディーに観測します。
水平モード(En-face)、垂直モード(En-coupe)、3Dモードの切り替えが1クリックで行えます。

OCT (光干渉断層撮影) は、光の干渉性を利用して試料内部の3D構造を高分解能・高速・非接触・非侵襲で撮影する技術です。細かい原理の違いにより、SS-OCTシステムFF-OCTシステム等、さまざまなシステムがあります。

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