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反射板とは(標準反射板の選び方)

反射板とは、光や電磁波などを反射する板を広く一般的に示しますが、この記事では光の拡散反射板についてご紹介いたします。 特に、拡散反射率が既知の反射板は「標準拡散反射板」と呼ばれ、光測定を行う際の校正基準としてなくてはならないものです。反射標準、白色板、標準白色板などとも呼ばれます。
米国ラブスフェア社は独自の反射材・反射コーティング技術で高品質な標準反射板を製造しています。近年の多分野におけるリモート測定やLiDAR試験のニーズに応えて、新しいコーティング技術のパーマフレクトが開発されました。野外使用に適した耐久性をもつパーマフレクトの登場で、軽量かつ大型の標準反射板の製造が可能となり活躍の場面が広がっています。

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正反射と拡散反射

固体表面に光が入射すると、正反射、および拡散反射が起きます。

正反射(鏡面反射)

反射板の代表である鏡のように、平滑な面に光が入射すると、入射角と同じ角度で反射光が出射されます。これが正反射(または鏡面反射)です。右図のように、例えば反射面に垂直な軸に対して8度の角度で入射した光は -8度の角度の出射光として反射されます。

正反射(鏡面反射)

正反射(鏡面反射)

完全拡散反射(ランバート反射)

一方、表面が平滑でない面に赤外光が入射すると、一部は表面で正反射しますが、残りの光は拡散反射されます。理想的な完全拡散反射(ランバート反射)においては、右図のように光の入射角度にかかわらず、出射光は全ての方向に均一に反射されます。反射面の見た目の明るさ(輝度)はどの方向から見ても一定です。標準反射板(標準白色板、反射標準)と呼ばれているものは、ほとんどの場合は拡散反射板で、正確には標準拡散反射板であることになります。このような反射標準としては、スペクトラロンという材料が最もランバート反射特性に近い反射特性を示すといわれ、広く一般的に用いられています。

完全拡散反射(ランバート反射) 光度表示

完全拡散反射(ランバート反射) 光度表示

完全拡散反射(ランバート反射) 輝度表示

完全拡散反射(ランバート反射) 輝度表示

 
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  スペクトラロン スペクトラフレクト パーマフレクト インフラゴールド
波長範囲 250–2500 nm 300–1300 nm 350–1200 nm 0.7–20 μm
最大反射率 99% 97% 94% 94%
特性 発泡樹脂加工されたPTFEで、非常に高い反射率とランバートに最も近い拡散性を持ちます。撥水性があり、水洗いできるため屋外使用も可能です。 硫酸バリウムのコーティングで、スペクトラロンに次ぐ反射率を持ちます。 硫酸バリウムに耐候性を付加したコーティング素材です。粉塵や湿度等に耐性があり、水洗いできるため大型化でき屋外使用も可能です。 物理的に表面を荒らした基材に金を蒸着した素材です。近赤外から中赤外で使用できます。
注意点 素材内部で散乱を繰り返すことにより特性を発揮するため、99%の反射率を実現するには7mm程度の厚みが必要です。 水分により、特性の変化およびコーティングのハガレが起きます。最高使用環境温度は80℃程度です。    
正反射(鏡面反射)

スペクトラロンとスペクトラフレクトの分光反射特性データの例

反射率測定の基準として

標準反射板の最もよく用いられる用途です。反射率が既知のリファレンスとして、分光器やセンサーなどの光測定機器の校正に使用します。

分光器の校正用標準として用いるには、波長ごとの反射率データが必要になります。スペクトラロンには通常250から2500 nm (2.5 μm) の波長域で1 nmおきの分光反射率のデータが添付されます。

塗装や塗料などの世界では JIS K 5602 塗膜の日射反射率の求め方 にスペクトラロンが標準白色板として紹介されています。

スペクトラロン反射標準

リモートセンシングの基準として

実験室内の測定機器に限らず、屋外の大型測定機器についても標準反射板を用いて校正が可能です。昨今注目が高まっております、車載カメラ・ドローンによる空撮・人工衛星からのセンシング、といったリモート測定は、「現場」において「イメージング(2次元測定)」で行うことが多くなっています。

このような測定に用いる大型の反射板は反射ターゲットと呼ばれ、拡散反射性能に加えて、大きな面の全域にわたって均一であること、屋外使用に耐久性があることが要求されます。ラブスフェアー社のスペクトラロンやパーマフレクトはこのような特性を備えており、世界中でリモートセンシングのターゲットとして用いられています。

スペクトラロン反射ターゲット
スペクトラロン反射ターゲット

感度校正の基準として

検出器やセンサーの感度を校正するには、高反射率だけではなく、反射率の異なる複数の反射標準が必要になります。スペクトラロンやパーマフレクトにカーボン色素を加えることで、任意の反射率に調整が可能です

ここでいう反射率とは公称値で、例えば50%の反射板はどの波長の光も常に50%反射するわけではありません。分光器の感度校正に用いるには、波長ごとの反射率のデータが必要になります。スペクトラロンのグレー反射板には99%反射板と同様に1 nmおきの分光反射率のデータが添付されます。 。

スペクトラロン反射標準セット

スペクトラロン反射標準セット

スペクトラロン反射標準セットの分光反射特性データの例

スペクトラロン反射標準セットの分光反射特性データの例

反射板・拡散板として

高い反射率を活かし、単純に光を反射・拡散させる目的でも使用可能です。スペクトラロンは紫外線から赤外線領域の一部まで非常に高い反射率を持ち、また樹脂素材であるため任意の形状に容易に加工が可能です。レーザ内部のキャビティから大型の太陽光拡散パネルまで、さまざまな用途に用いられています。ラブスフェアー社では、特注もお受けいたします。

スペクトラロン加工品
 
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反射標準の寿命は何年ですか?

スペクトラロンの物理的な寿命は数十年以上です。ただし反射標準としての寿命は異なります。

反射標準としての寿命は一概には言えませんが、メーカー推奨は1年です。これは一般的な実験室環境で使用した場合に、汚れやほこりの付着により分光反射率が添付データから乖離することを想定したものです。お客様のご判断により、自主管理をされて1年以上の寿命で使用することは可能です。逆に、より過酷な環境(粉塵にさらされる等)では1年より短くなります。

長い期間使用した反射標準は、メーカーに返送し、クリーニング・再校正を行うことで再度使用することができます(新たな校正データが添付されます)。再校正には1か月ほどかかりますので、その間作業を止めたくない場合は予備として複数の反射標準をご用意されることをお勧めします。また、場合によっては、再校正を行うより新品を買った方が安いこともあります。

長期間再校正なしで使いますと知らず知らずのうちに表面が汚れ、反射標準として不適切な状態で使うことになります。目で見てもわからない汚れであっても、反射率や拡散性は低下しています。目で見てわかるような状態になると標準反射板として使用するのは大変危険です。例えば、サンプルの反射率が反射標準を上回り、測定値が100%を超えてしまったりします。消耗品としてお考えいただくのがよいかと考えます。

反射板を扱う時の注意点は?

取り扱い時には手袋を着用するなどして素手で触らないように気を付け、不使用時にはケースに収納するなどし、汚れやほこりの付着を防いでください。スペクトラロンには親油性があり、皮脂や機械油等が付着すると樹脂の内部まで入り込み、反射率の低下を招きます。スペクトラフレクトに触れると、汚染されることに加えて、コーティングがはがれる恐れがあります。

スペクトラフレクトの使用温度の上限は80度です。これ以上の温度ではコーティングに使用していますバインダーが変質し、表面が黄色く変色します。見て分かるほど変色した状態では、反射率は大きく落ち、使用に差し支えます。

反射板が汚れてしまったのですがクリーニングできますか?

表面のほこり等の汚れは乾燥エアーブローなどを横から吹き付けて取り除いてください。スペクトラフレクトにエアーブローを使用する際は、あまり強いブローで吹かないように注意してください。結露して水分が付着したり、風圧によりコーティングがはがれたりする場合があります。

スペクトラロン、パーマフレクトの反射板は水洗いが可能です。ただし、洗浄後の反射率が添付の校正データと全く同じである保証はできません。

洗浄にはできれば純水を使用し、薬品は使用しないでください。スペクトラロンの場合、表面の損傷や軽度の汚れは、平らな面に耐水性の紙ヤスリ(220-240番程度)を敷き、水を流しながら磨くことで元の状態に近づけることができます。パーマフレクトの場合は、表面はこすらず流水で洗うのみにし、汚れが落ちにくいときでも柔らかなブラシで撫でて洗う程度にとどめてください。

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