ハイパースペクトルカメラとは
ハイパースペクトルカメラとは
『カメラ』とは被写体の画像や映像を取得するデバイスの総称であり、小型のデジタルカメラを搭載した携帯電話やスマートフォンの急速な普及により、今やカメラは私たちにとって最も身近な光学機器の一つになりました。デジタルカメラは被写体の像を、レンズを介してCCDやCMOSといった画像素子上に結像させて得た赤・緑・青(RGB)の3種類の画像を重ね合わせることにより、人の目に映る色合いを再現したカラー画像を取得します。
RGBは、それぞれ異なった3種類の光の波長帯(バンド)を意味します。複数バンドの組み合わせは分光スペクトルとなりますので、複数バンドの画像が取得できるカメラを『スペクトルカメラ』と呼びます。つまり、RGB画像が取得できるカメラは3バンドのスペクトルカメラということになります。多数バンドの画像データが取得できるカメラの内、バンド数が数十バンドのものまでをマルチスペクトルカメラ、それ以上のバンド数が取得できるものをハイパースペクトルカメラと呼んでいます(マルチとハイパーの言葉の使い分けには明確な定義はありません)。
ハイパースペクトルカメラで取得したデータは、各バンドの画像データの重ね合わせであり、すべてのバンド画像上の同じ座標にあるピクセルの情報をつなぐと、その点の分光スペクトルデータとなります。バンド数が多ければ多いほど、撮影対象物が持つ固有の分光スペクトル情報を細かく取得できますので、人間の視覚やバンド数の少ないRGBカメラでは困難であった識別が可能になります。
測定方式と特色
ハイパースペクトルカメラのデータ取得のために、様々な技術が提案されてきました。
プッシュブルーム(ラインスキャン)方式
現在最も多く採用されている手法はプッシュブルーム(ラインスキャン)方式で、スリットを通過したライン状のイメージをプリズムやグレーティングを用いて分光することで、ライン状のハイパースペクトル画像が取得できます。そのスリットで測定対象物をスキャンし、面として画像データを合成します。
本方式は多バンドのデータ取得に適していますが、綺麗な画像を合成するためには、測定対象物を安定した速度でブレなくスキャンせねばならないため、ベルトコンベヤーなどが必要となります。
スナップショット方式
一方、一度に面としてハイパースペクトル画像を取得するスナップショット方式も提案されています。レンズから画像センサーまでの間に、液晶素子や音響光学素子を配置して分光を行い、ハイパースペクトル画像を取得するという方式です。
これにより、撮影の視野に収まる画像を一瞬でハイパースペクトル画像にすることが可能であり、ドローンに搭載しても綺麗な画像が取得できるなど優位性が非常に高い手法ですが、カメラが大型で高額になりがちです。
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米国BaySpec社製OCIシリーズ
小型ハイパースペクトルカメラOCIシリーズ
プッシュブルーム方式のOCI-1000シリーズと、スナップショット方式のOCI-2000シリーズの2タイプをご用意しています。
従来の光学部品を廃して小型化・軽量化した画期的な分光方式を採用しています。
ファブリペロー型バンドパスフィルタを直接実装したCMOSイメージセンサを搭載することで、光学系のサイズを極限まで抑え、制御部やバッテリーを含めて装置本体をハンドヘルドサイズにまで小型化することに成功しました。
OCIシリーズの活用例
スナップショット方式のドローンに搭載したサンプル画像は、ありますか。
スナップショット方式のOCI-2000(測定波長675~975nm、25バンド)をドローンに搭載して、収穫直前の水稲圃場の撮影を行いました。 飛行高度80mより187画像を撮影してつなぎ合わせたものが下の画像です。ドローンを用いたカメラ画像撮影では、ドローンが上空で受ける風やドローンの動作そのものからの振動により、取得画像が不鮮明になる事がりますが、OCI-2000はスナップショット方式のため、ジンバルを搭載していないにもかかわらず、80m上空からでも稲穂が十分鮮明に撮影されていることが分かります。
具体的な分光反射スペクトルサンプル画像はありますか。
上記結合画像内の測定対象圃場上で7個所の分光反射スペクトルを取得しました。水稲は710nm付近に吸収があるため分光反射率が低く、そこから長波長側の750nmに向かって反射率が急峻に立ち上がるという特徴的な分光反射スペクトルを持ちます。本測定でも、7個所すべての地点において水稲の典型的な分光反射スペクトルを示しましたが、スペクトルを詳細に見るとそれぞれ違いがある事が分かります。色分けされた各個所の分光反射スペクトルを、水稲を採取して行う化学成分の分析結果や、各個所の土壌成分や水分含量等の環境要因と組み合わせて解析することにより、ドローンとハイパースペクトルカメラを用いた水稲評価の有用性が少しずつ明らかになってゆくことが期待されます。