よくある質問
スペクトラロン標準反射板について
積分球について
液体透過セルについて
固体の透過測定について
スペキュラー反射について
拡散反射について
ATRについて
- ゴムの測定に最適なATRアクセサリには、どのようなものがありますか?
- 最近、ATRアクセサリのスループットが落ち、S/Nが悪くなってきましたが、どうしたのでしょうか?
- ATR結晶はどのような溶剤で洗浄したらよろしいでしょうか?
- ATR結晶の洗浄では、どのような溶媒の使用を避けたらいいでしょうか?
- ZnSeをATRで使用したときの測定可能波数範囲はどの程度でしょうか?
- ZnSeはどの程度のph範囲で使用可能でしょうか?
- 無機の酸の分析ではどのようなATR結晶を使用したら良いでしょうか?
- 弱酸の分析ではどのようなATR結晶を使用したら良いでしょうか?
- 強いアルカリの分析ではどのようなATR結晶を使用したら良いでしょうか?
- 結晶についてのより多くの情報はどのような所にありますか?
- ZnSe 45°の結晶では何回ぐらい反射しているのでしょうか?
- 昨日ATRを使用したときは十分なエネルギーが出ていたのですが、 今日、使用したらスペクトルがきれいにとれません。どうしたのでしょうか?
- 結晶の再研磨は可能でしょうか?
- 非常に吸収の強い試料はどのように測定したら良いでしょうか?
スペクトラロン標準反射板(Labsphere(ラブスフェア)社製品)
スペクトラロンとは?
スペクトラロンは、米国ラブスフェア社が開発した従来の硫酸バリウムや酸化マグネシウムに代わる新しい拡散反射材料です。 パウダー状のテフロンを均一な力で押し固めベーキングしたもので、反射率・拡散性・耐久性に優れています。 内部は細かい多孔構造で、スペクトラロンに照射された光が孔に入り込み拡散反射をすることで、優れた拡散性を生み出しています。
スペクトラロン反射率の種類を教えてください。
反射率は、99・80・75・60・50・40・20・10・5・2[%]の10種類が用意されています。 80%以下の反射率は、スペクトラロンにカーボン色素を注入しグレーを再現しています。 白・グレー以外にも、スペクトラロンをベースとした色標準・蛍光標準・波長標準があります。
スペクトラロンの主な用途は何ですか?
- 分光光度計の校正
- 血液分析装置の校正
- CCDアレイの校正
- 太陽光拡散パネル
- 塗膜の日射反射率測定のリファレンス(JIS K 5602 に紹介されています)などがあります。
スペクトラロンの厚みについて教えてください。
前述のようにスペクトラロンは多孔性構造をもつので、光の透過を防ぐためにスペクトラロンは7[mm]以上の厚みをとることが理想とされています。 ちなみにスペクトラロン標準反射板の製品は、10[mm]の厚さで製造されています。
スペクトラロンの取り扱い方法を教えてください。
スペクトラロンは疎水性を示す反面、無極性溶剤や油を吸収しやすい性質があります。 よってスペクトラロンへの皮脂の付着を防ぐため、手袋を装着して取り扱います。
スペクトロンのクリーニング方法を教えてください。
スペクトラロンは疎水性なので、水洗いが可能です。 表面の損傷や軽度の汚れは、平らな面に耐水性の紙ヤスリを敷き水を流しながら磨くことで元の状態に近づけることができます。 紙ヤスリは220-240番程度のものがお薦めです。
積分球(Labsphere(ラブスフェア)社製品)
積分球とは?
球状の形で球内面が硫酸バリウム等で白色にコーティングされたものです。
積分球内に入射した光が、拡散性に優れた内壁で拡散反射を繰り返すことで、光源に比例する均一な光を作り出します。
光の指向性をなくし光強度を均一にする手段として利用されます。
近年ではLEDやLED電球の光束値(ルーメン値)の測定に多く実用されており、大型サンプル向けに最大で直径3メートルの積分球が用意されています。
積分球の主な用途は何ですか?
- LEDなどの発光体の全光束測定
- 均一標準光源
- 反射/透過測定
- ビームパワー測定
などがあります。
積分球内面の種類を教えてください。
スペクトラフレクト/SF(硫酸バリウム)コーティング、スペクトラロン/SL(テフロン)形成、インフラゴールド/IG(金)コーティング、MgF-Al(アルミニウム、フッ化マグネシウム)コーティングの4種です。
扱う光の波長範囲に合わせて積分球の種類を選択します。
- スペクトラフレクト … 300~1300[nm]
- スペクトラロン … 250~2500[nm]
- インフラゴールド … 0.7~20[μ]
- MgF-Al … 紫外領域
最も一般的で多く使われているのは、スペクトラフレクトコーティングタイプです。
積分球に存在するポートの許容範囲を教えてください。
理想の積分球は、ポートや遮光板などの存在ができるだけ少ないことです。 積分球上の総ポート面積は、積分球表面積に対して約5[%]以内になるのが目安です。
スペクトラフレクトコーティングの厚みを教えてください。
スプレーでの吹き付けで繰り返しコーティングが施され、約0.5[mm]の厚さに仕上がります。
積分球のスループットについて教えてください。
積分球に入射する光に対する出射光の割合をスループットと呼びます。 積分球内に入射した光は内面で反射を繰り返すため、スループットは高くありません。 集光が目的の場合は有効ではありませんが、反対に光を減衰させる方法として活躍します。
積分球の大きさ選定の目安を教えてください。
積分球内に入れる光源の大きさによって選択されます。
中に入れるものが細長い棒状のものであればその長さの1.5倍以上の直径、また板状のものであればその対角線の2倍以上の直径をもつ積分球が理想です。
また光源の明るさも選定の目安になります。
積分球は、大きければ大きいほど反射回数が多くなるため均一性がよくなりますが、同時に減衰率も大きくなるため、例えば数ルーメン程度の微弱な光を1[m]以上の大きな積分球で測定すると、ノイズの割合が大きい測定結果になります。
よって弱い光を測定する際は、適切な大きさの積分球での測定が推奨されます。
スペクトラフレクトコーティング積分球の管理及び再コーティングについて教えてください。
硫酸バリウムは水を吸ってしまう性質があるので、水分は厳禁です。
内壁表面に付着したホコリ等は、柔らかいハケもしくはエアーで飛ばしてください。
部分的にキズが付いてしまった場合は、修復用の硫酸バリウムを塗装して修復します。
全内壁を再コーティングする際は、メーカーに返送して実施されます。
ラブスフェア社の積分球は硫酸バリウムコーティングを十数回重ねて施しているため、コーティングの質において良い評価を得ています。
積分球アクセサリの種類を教えてください。
積分球アクセサリ
- ポートプラグ … 使用しないポートを塞ぐ
- ポートリデューサ … ポートサイズを小さくする
- 各アダプタ … ファイバーや検出器等の取付
その他、ご希望に沿ったアクセサリを作製いたします
全光束測定システムの標準ランプの取り扱い方法を教えてください。
全光束測定システムは標準ランプ(ハロゲンランプ)を元に校正され測定を行います。 一般的に、ハロゲンランプ自体の寿命は数百時間程度あるとされていますが、標準ランプは測定の基順となる存在ですので、 1年に1度もしくは30時間使用を目安に交換することが推奨されます。
標準ランプは手袋を装着してお取り扱いください。
全光束測定システムの校正について教えてください。
標準ランプによるシステムの校正(AUXランプの値付け作業)は、年に3~4回の頻度で行うことが推奨されます。 AUXランプはワーキングスタンダードとして日々の測定に使用されるため、1年毎の交換をお薦めしています。
液体透過セルについて
液体セルで測定した時、ベースラインがうねっていますが、これは何がいけないのでしょうか?
使用しているセルの窓板が非常に良く研磨されており、窓板での内部反射による干渉縞とセルギャップによる干渉縞が考えられます。
窓板が原因の場合、表面を少しあらすことで干渉縞が減少します。
また、セルギャップが原因の場合、別の厚さのスペーサーに変えて試みてください。
液セルで試料を測定した時に、透過率表示でベースラインが100%以上になってしまいました。どうしたら良いでしょうか?
使用されている窓材の内面があれている場合、バックグランドを空のセルで測定した時と試料がセルに入った時で赤外光の散乱の状態が異なることが原因です。
バックグランド測定時は空のセルを用いずにエアーをリファレンスにするか、新しいセルに交換してください。
水溶液系の試料の測定ではどのような材質の窓を使ったら良いでしょうか?
BaF2、ZnSe等がありますが、両者とも水に対し若干の溶解度があります。
CaF2は水に不要ですが測定範囲で制約を受けます。
どの程度の波数範囲を測定するかで選択肢が変わります。
試料を溶媒で溶解させた後、ウィンドウに塗り、溶媒が蒸発後に測定したいのですが、なにか良いホルダーはありませんか?
窓材が25mm径のプレスロックホルダーが便利でしょう。
KBrやNaClの窓板をクリーニングする場合、どのような溶媒が良いでしょうか?
ヘキサンの様な非水系溶媒を使用します。アルコール類には水が含まれますので絶対に使用してはいけません。また、湿度の多い環境下で非水系溶媒を使用したとき、気化熱により窓材が冷却され、雰囲気中の水分が結露する事がありますので注意してください。
固体の透過測定について
Geは高温下でも使用可能でしょうか?
いいえ、Geは約60°で赤外光が透過しなくなります。
なぜ、ベースラインが傾くのでしょうか?
ほとんどの場合、アクセサリの光学的なアライメントが十分でないことが原因です。
KRS-5(又はZnSe)偏光子のクリーニングは可能でしょうか?
いいえ、偏光子のグリッド面に触れるとグリッドが損傷され、偏向性能が悪化します。
アクセサリのミラーのクリーニングはどのようにしたら良いでしょうか?
殆どのミラーはアルミ蒸着されています。ペーパーや脱脂綿等で直接ミラーを拭いたりしますと傷が付きます。
また、溶媒等で洗浄すると溶媒に含まれる微量の酸により浸食されたり、蒸着面が剥離することがあります。
エアーガンや窒素ガスでミラー表面のほこりを吹き飛ばす程度にとどめてください。
スペキュラー反射について
入射角80°の反射アクセサリFT-80で付属のマスクを使って測定した時、 1200-700 cm-1に非常に強い吸収ピークが現れます。
このアクセサリでは小さな試料を測定するために、陽極酸化のアルミニウムマスクが付属しています。このマスクはローソク等の煤をつけてあります。
この煤が剥がれてくると酸化アルミニウムの吸収が1200-700 cm-1に現れます。再度、煤を付けてご使用ください。
反射測定のスペクトルで微分されたような鋭いピークが見られますが、どのように取り除いたら良いでしょうか。
微分されたような鋭いピークは反射法で分散による結果です。比較的厚めの試料を測定した時に出現します。このようなピークを補正するにはK-K(Kramers-Kronig)解析を行うことで透過率スペクトルのように変換できます。
反射アクセサリで配向(方向)性の測定が可能ですか?
反射アクセサリにKRS-5(又はZnSe)ワイヤーグリッド偏光子を取り付けることで、測定が可能です。
偏光子の不要な好感度反射アクセサリはありますか?
はい、Harrick製Refrector、ST製FT-85はSiウェハーを用いた特殊な光学系により、P偏光だけが試料に届きますので、偏光子は不要です。
拡散反射について
透過率のようなスペクトルを得るには試料をどのようにしたら良いでしょうか?
一般的には有機試料の場合は試料とKBrの混合比(重量比)を5:95に、無機試料の場合は1:99にし、メノウ乳鉢等で良く混合します。
試料が硬くメノウ乳鉢では粉砕し難い場合は、電動粉砕器等を使用し、粒径が2ミクロン以下になるようにします。
粒径が測定波数領域に入るような大きさの場合、干渉縞が出ることがあります。
試料カップにはどのように詰めたら良いでしょうか?
最初に試料カップからあふれるくらいに入れ、その後試料カップの上の方を軽くたたき、少し沈んでからヘラなどで注意深く平らにします。
この時、ヘラなどで上から押さえつけることは厳禁です。
試料を硬くぎっしりと詰めた場合、光の拡散が減り正反射成分が強くなってしまいます。
測定でバックグランドには何を用いたら良いでしょうか?
何種類かの希釈剤がありますが、試料を調整した時の希釈剤を用います。
中赤外領域での測定では、一般的にはKBrを用います。
希釈剤にはCsI、KCl、ダイヤモンドパウダー、ポリエチレンパウダー等があります。
試料はどの程度のKBrで希釈したら良いでしょうか
一般的には、
有機試料の場合:重量比で試料10%に対しKBrを90%
無機試料の場合:重量比で試料2~5%に対しKBrを95~98%
を目安にします。
試料カップにはどのような大きさのものがありますか
スペクトラテック製の場合、マクロカップは径が13mmφで0.25g入ります。 ミクロカップでは径が3mmφで0.01g入ります。
ATRについて
ゴムの測定に最適なATRアクセサリには、どのようなものがありますか?
最近ではIREにゲルマニウム(Ge)やダイヤモンドを用いた1回反射のATRは、操作が簡便であることから人気を集めており、アクセサリメーカー各社から発売されております。
代表的なものとして、MIRacle(PIKE製),GoldenGate(SPECAC製),DulasamplIR(ASI製),Thunderdome(SpectraTech製)等があります。
ゴム等の測定にはゲルマニウム(Ge)結晶を用いたATRが最も適しています。
もし、すでにATRアクセサリをお持ちであれば、ゲルマニウム(Ge)結晶を使用することで、あなたの試料の表面分析をより簡単に行うことができるでしょう。
ゲルマニウム(Ge)はエバネッセント波が最も小さく、試料表面からもっとも浅い測定に適しています。
最近、ATRアクセサリのスループットが落ち、S/Nが悪くなってきましたが、どうしたのでしょうか?
一般的なATR結晶はZnSe(またはKRS-5)で比較的硬く(または柔らかく)、結晶をクリーニングした時の小さな引っ掻き傷や化学反応により結晶表面が荒れてきていると考えられます。 使用する結晶の物理的な性質を理解して取り扱うようにしてください。
ATR結晶はどのような溶剤で洗浄したらよろしいでしょうか?
もし、それがZnSeでしたら蒸留水、中性洗剤の希薄溶液、アセトン、ヘキサン、メタノール等を使うことができます。
ATR結晶の洗浄では、どのような溶媒の使用を避けたらいいでしょうか?
もし、トラフプレート(ボート型)の水平ATRをご使用でしたら、塩素系の溶剤(塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルム等)の使用は避けてください。
大半のトラフプレートは結晶をプレートに固定する為に、エポキシ樹脂が使用されており、このエポキシにダメージを与えます。
唯一、PIKE製トラフプレートはエポキシの代わりにインジウムが使用されており、このような問題はありません。
ZnSeをATRで使用したときの測定可能波数範囲はどの程度でしょうか?
4000~650 cm-1の領域が測定可能です。
ZnSeはどの程度のph範囲で使用可能でしょうか?
ph 5~9 の範囲で使用できます。
無機の酸の分析ではどのようなATR結晶を使用したら良いでしょうか?
AMTIR (使用可能 pH 範囲 <1~9)。
AMTIR はGe、As、Teの混合から出来ています。
Geは熱王水以外には侵されませんが、測定感度は悪くなります。
弱酸の分析ではどのようなATR結晶を使用したら良いでしょうか?
Ge (使用 pH 範囲 1から14)がよいでしょう。
強いアルカリの分析ではどのようなATR結晶を使用したら良いでしょうか?
ZnSe、Geがよいでしょう。
結晶についてのより多くの情報はどのような所にありますか?
"HANDBOOK OF INFRARED OPTICAL MATERIALS"(EDITED BY PAUL KLOCEK)Marcel Dekker,Inc.に詳しく紹介されています。
ZnSe 45°の結晶では何回ぐらい反射しているのでしょうか?
結晶内部での反射回数は次式で計算されます。
N = L* cot(結晶の入射角) / 2t
ここでLは結晶の長さ、t 派結晶の厚み
長辺が80mm、短辺が72mm、厚さ4mmの45°入射の結晶では
N = 80*tan(45)/2*4 = 10
N = 72*tan(45)/2*4 = 9
でトータル19回反射していることになります。
平行四辺形の結晶で長さが50mm、厚さ3mmの45°入射の結晶では
N = 50*tan(45)/2*3 = 8.3
でトータル16回反射していることになります。
昨日ATRを使用したときは十分なエネルギーが出ていたのですが、 今日、使用したらスペクトルがきれいにとれません。どうしたのでしょうか?
結晶の表面または裏側を見てください。
クラックがいっていないでしょうか。ちょうど、オレンジの皮のように見えませんか。
または端に向かってガラスが割れたように見えませんでしょうか。
クリーニングの時に熱的なストレスでクラックが入ることがあります。
急激な熱変化は結晶に悪影響を及ぼします。洗浄液は室温のものを推奨します。
また、サンプルクランプで必要以上に圧力を加えたとか、洗浄時に誰かが落としてしまったとか、なかったでしょうか。
結晶の再研磨は可能でしょうか?
結晶の再研磨は可能ですが、再研磨により表面から1mm程度薄くなります。
薄くなることで反射回数が変わりますので、今までのスペクトルとは異なることになります。
研磨手数料、データの変化等を考慮するならば、新しい結晶をお求めになることをお勧めします。
非常に吸収の強い試料はどのように測定したら良いでしょうか?
Ge結晶を用いた1回反射のATRが良いでしょう。
Geは屈折率が高いため、赤外光のにじみだしが少なく、深く潜り込むことがありません。