積分球とは
積分球の原理とアプリケーション
積分球はきわめて簡単な仕組みの光学コンポーネントで、光を集め空間的に積分し均一にするためのものです。積分球の内壁はその名の通り球面になっており、高い反射率で拡散性に優れたコーティングあるいは材料でできています。
積分球の中に配置された光源からの光、あるいは積分球に開けられたポート (開口部) を通して外部から導入した光は、積分球の内壁で拡散反射を繰り返し空間的に積分されます。これにより積分球の中は、光源の光の広がりや入射角度に依存することなく、光源の強度に比例した均一な強度分布となります。積分球の大きさと比較して十分小さな出射ポートを設けておくことで、積分球内の均一な強度分布を損なうことなく、均一化された光の一部を取り出すことが可能です。
均一化した光の利用目的は、大きく分けて2種類あります。1つは光量計としての利用で、出射ポート面に検出器を取り付けて強度を測定することで、光源の配光分布に依存せずに全体の光量を知ることができます。もう1つは拡散光源としての利用で、ポートから取り出した均一な光をそのまま光源として用い、照明や画像センサの感度校正に利用可能です。
システムズエンジニアリングは積分球の世界トップシェアを誇る米国ラブスフェア社の製品を長年にわたり取り扱っており、コンポーネントとしての積分球から各光学測定に特化した積分球システムまで広く対応いたします。
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積分球には主に以下の4種類の利用形態があります。
ビームパワー測定
積分球外部から光を導入し、光量を測定します。積分球により均一化させて測定を行うため、ビームの広がり角・ビーム内の強度分布・偏光条件等に依存せずに、ビームパワーを測定できます。また、積分球はスループットが低いのでハイパワーレーザーを測定する際の減衰器として使用することもできます。
関連製品情報
レーザ/LEDパワーメータ LPMSは、積分球を用いたレーザーおよびLED用パワーメータです。
全光束測定
積分球内部にLEDや照明器具等の光源を設置して、光量を測定します。積分球によって均一化させて測定を行うため、光源の配光分布(どの方向に、どのくらいの強さの光が出ているかの分布)に依存せずに全光束を測定可能です。従来の白熱電球のワット数にかわってLED電球の明るさを示す「全光束値」(単位: ルーメン)は、この手法で測定されています。アークランプ、蛍光灯、白熱灯、LEDモジュールやLED照明器具、モバイル機器やディスプレイの液晶バックライト等、あらゆる光源の全光束を簡単に測定できます。
関連製品情報
全光束測定システム は、測定対象に合わせて積分球のサイズや分光器のグレードをお選びいただけます。
また10インチ(25センチ)から3mまでの積分球単体・分光器・電源等のコンポーネントごとの販売も行っております。
均一標準光源
積分球内部で均一化された光は、面内の強度分布が非常に均一であるため、輝度標準光源あるいは照度標準光源として使用できます。CCDカメラの素子のばらつきを校正するのに最適で、光量調節機能を付加すればゲ インの校正も同時に可能です。また単に拡散照明としても利用できます。
関連製品情報
均一標準光源システムでは、汎用タイプのほか、太陽光を再現したシステム、低輝度システム等をご用意しております。また、小型・調色可能なシステムもございます。
また均一標準光源用積分球単体での販売も行っております。
反射/透過測定
物質表面での光反射には正反射成分と拡散反射成分が含まれますが、一般的な反射測定は正反射成分だけを測定しています。また、拡散反射測定の場合も、拡散反射の一部だけを集めて測定しますので定量的 ではありません。積分球を利用することで、全反射量(正反射成分と拡散反射成分)や拡散反射成分を定量的に測定することが可能になります。透過の場合も同様で、積分球によって拡散透過を含めた全透過量を定量的に測定できます。
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積分球には主に以下の4種類の利用形態があります。
積分球の大きさについて
積分球の大きさは、積分球の中に入れる光源やそれに付随する治具の大きさによって選ばれなければなりません。積分球の中に入れるものが細長いものであれば、その長さの1.5倍以上の直径の積分球が必要です。板状のものであれば、その対角線の長さの2倍以上の直径が必要です。
ポートの大きさについて
積分球の大きさと比較して、ポートが大きすぎたり数が多すぎたりすると、積分球としての性能が損なわれてしまいます。ポートの大きさは積分球直径の 1/2.5 以下、ポートの総面積は積分球表面積の 5% 以下であることが理想的です。
スループットについて
積分球に入射する光に対する出射光の割合をスループットと呼びます。一般に積分球のスループットは高くありません。した がって集光だけが目的の場合、積分球はあまり有効な手段ではありません。反対に、光を減衰させる方法として積分球は有効な手段と言えます。
拡散反射コーティング/拡散反射材料について
積分球内壁の拡散反射コーティングあるいは拡散反射材料とし て、スペクトラフレクト (硫酸バリウム)、スペクトラロン、インフラゴールドの3種類を用意しています。下の表を参考に利用目的に合ったものを選んでください。
※スクロールしてご覧いただけます。
スペクトラフレクト | スペクトラロン | インフラゴールド | |
---|---|---|---|
波長範囲 | 300–1300 nm | 250–2500 nm | 0.7–20 μm |
反射率 250 nm 300 nm 400 nm 700 nm 900 nm 1100 nm 1500 nm 2000 nm 2500 nm 20 μm |
0.94 0.96 0.98 0.97 0.97 0.97 0.92 0.85 0.77 — |
0.96 0.98 0.99 0.99 0.99 0.99 0.99 0.97 0.93 — |
— — — 0.88 0.93 0.94 0.94 0.94 0.94 0.94 |
特性 | 硫酸バリウムのコーティングで、最も一般的に使われています。近赤外でも反射率は比較的良好ですが、水分を吸着するので水分による影響を受けます。 | これはコーティングではなく、スペクトラロンと呼ばれる非常に反射率が高い材料を形状加工して、積分球そのものを形成しています。スペクトラロンは様々な形状に加工でき、数が多くなれば値段も安くなるので、OEMに最適です。欠点としては、上記の反射率を保つのに7mm~10mmの厚さが必要な為、反射測定などには不向きです。 | 反射率が低いのでスループットが良くありませんが、中赤外や遠赤外の光を均一な状態で扱う方法は、他の選択はありません。 |
積分球は光量の測定に最適
積分球は球の内面で光を繰り返し拡散反射させ、均一化する光学コンポーネントです。そのため、光源の広がり(角度分布)や入射角に依存せず、光量を正確に測定することができます。この性質を生かして、レーザ光などのビーム強度の測定、LEDなどの全光束の測定、材料の反射率・透過率の測定などに最適です。
また、積分球内で均一にした光を外部に取り出し、カメラやセンサの校正を行うための均一標準光源としての利用も可能です。
逆に、光源の角度ごとの光量の分布や広がり角を測定したい場合は、配光測定装置が最適です。
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